静嘉堂文庫美術館「日本刀の華 備前刀」レポ

静嘉堂文庫美術館で開催中の「日本刀の華 備前刀」、行ってきました。

レポというか、個人的に興味深い内容が多かったのでただの備忘録です。

 

静嘉堂文庫美術館 HP→ http://www.seikado.or.jp/

「日本刀の華 備前刀」展示目録 → http://www.seikado.or.jp/exhibition/pdf/catalog20190413.pdf

 

都心(とはいっても世田谷の住宅街ですが)にあるのにめちゃめちゃ森に囲まれててびっくりしましたね…。

今回は国宝の曜変天目の展示もあったので、それ目当てのお客さんもいらしたようです。

入館して美術館から外を見渡せる展望の良い場所に曜変天目が展示されていたんですが、自然光の当たるとても明るいばしょだったので、すごくきらきらして綺麗でした…。5月に行った徳川美術館で天目茶碗も見てきたんですけど、あれが窯の中でなんやかんや(この部分調べたけど正直よく分かってない)あるとあんな不思議な柄になるんだなぁ~と思いながら見れたので面白かったです。知識の供給って大事。

 

刀剣の展示としてはちょ~~っと刃紋とかはみにくいかなと感じるものもありましたが、それ以上に刀剣についての説明がとても充実していたので刀剣鑑賞初心者のわたしでも十分楽しめました。刀剣の図と一緒にどういう作りで、ここがどういう刃紋になっていて、というのが添えられていたので、分からないなりになるほど~と思いながら鑑賞できた。

 

今回の展示ではタイトルの通り展示されているもの全て備前刀(相伝備前の兼光もあったけど)だったんですが、その中での変遷だったり、比較だったりというのが多く、印象に残った解説のうち「唯美的な一文字」と「美と実用の長船」というのがありました。

光忠が確立した長船派は、長光の時代に起こった蒙古襲来の刀剣需要に合わせて大量生産を可能にし、末備前として室町時代末まで続きます。

古備前から一文字、長船、末備前までとにかく数多くの刀工の作品が展示されており、刀派ごとの比較ができたのが面白かったですね!備前伝の刀剣の特徴として黒光りしている、とか、同じ備前伝の中でも一文字は刃紋が華やかで明るいとか。でも全体的に大概みんな丁子乱れだなとか。

あと刀装具の展示が多かったのも特徴的ですね!往時の拵が一緒に展示されていたりとか、目貫や笄なんかもいっぱいあって、そういった意味でも非常に印象的でした。

ここからはその中でも気になった説明をされていたものについて何点か、メモに残ってる限りで書き起こしていこうと思います。繰り返しますがこれは個人的な備忘録なので、専門的な意見は一切ありません。悪しからず。

 

 

No.5 古備前行光太刀 銘 行光

古備前行光は古備前包平の子と伝わっていますが、「行光」の銘は相州行光と似た銘を切るらしく、相州行光が古備前の作風を目指して作刀したのではという説があるらしい。

 

No.6 嘉禎友成太刀 銘 五月六日友成

友成といえば平安時代の刀工、御物である鶯丸などを鍛えた古備前友成ですが、この太刀は時代を下って鎌倉時代の刀工の作。この太刀にはもともと「嘉禎三季友成」の銘を切られていたが、明治期に流出した際に価値を高めるために「嘉禎三季」の部分を潰されたとされています。

 

No.15 一文字吉房太刀 銘 吉房

     附 雲文黒蒔絵鞘打刀拵

この太刀に関わらず一文字の刀剣には「重花丁子」という特徴的な乱刃があり、どの刀剣も非常に華やかな刃紋が印象的でした。また附属の拵は別名「夜桜塗り」とも呼ばれるもので、蒔絵が施されてとても綺麗でした。

 

No.18 長船光忠太刀 銘 備前長船光忠

展示室入って最初に展示されていたのがこの刀剣だったので、おそらく今回の目玉だったものと思われます。旧御物で現在は宮内庁三の丸尚蔵館所蔵とのことで、85年ぶりの里帰りだったそう。

光忠は「光忠」の二字銘が多く、この太刀のように「備前長船光忠」と切られたものは非常に珍しいらしいです。

古備前の技巧に走らない自然な美しさ」との説明があり、確かに派手ではないのですが穏やかできれいな印象を受けました。

 

No.20 長船真長小太刀 銘 真長

     附 蝋色塗鞘突兵拵

長船真長は光忠の子あるいは弟子と伝わります。基本的には穏やかな作風が多いのですが、この小太刀は華やかなつくりとなっています。また長光景光、真長の三工に特徴的な「三作鋩子」と呼ばれる鋩子になっています。

附属する拵は明治時代のもので、幕末期に流行った西洋式が取り入れられています。

 

No.22 長船景光太刀 銘 備州長船景光/元應元年十月日

梨子地にノコギリのような片落ち互の目の刃紋の景光らしい太刀です。片落ち互の目っていったら確か小龍景光や謙信景光もそうだったような。

 

No.23 長船兼光脇指 銘 備州長船兼光/延文二年二月日

兼光は前期は景光風、後期は相州伝の作風と大きく分かれるためそれぞれ別の刀工ではないかと思われてきましたが、現在は同一人物であるという説が有力らしいです。今回展示されていた脇指は相州伝の作風のものにあたります。

この刀剣を見て個人的に衝撃的だったことなのですが、樋が棒樋と添樋とあったのですが、添樋がほとんど消えて、一部だけがうっすらと残るのみになっていたんですよね。

研ぐうちに重ねが薄くなってしまったり、だからこそ研ぎ減っていない健全な姿で残されているものは価値が高いというのも理解していましたが、こんな樋が消えかかるほど研ぎ減るまで使われていたのか、というのが驚きでした。

 

No.30 長船元重脇指 銘 備州長船住元重/元和二二年十二月日

こちらもNo.23と同じく、刀身に彫られた三鈷剣(だったかな)の彫り物が薄くなるほど研ぎ減り、素人目にはよく分からなかったのですが皮鉄が研ぎ減ってところどころ心鉄がむき出しになっている状態だったそうです。

しかし元から心鉄が厚く、皮鉄を薄くすることで強靭に仕上げていたそう。

 

今回気になった刀剣はこれくらいでしたが、備前伝の様々な刀工のものが並ぶ備前刀オンリーの展示会で、しかも刀剣鑑賞初心者でも非常に鑑賞しやすい展示だったので、備前刀に興味があるよ!って人は是非行ってほしい展示会でした!

以上。